窓ガラスを叩く水音。
普通だったら気分まで重たくなってしまうようなこんな天気。
「最近雨多いね~…。」
そう言い嘆く君の変わらない横顔に、ニヤケを隠しながら頷いた。
「…そだな。」
ホントは嬉しい。
…なんて思ってみたり…。
「…彩、入れてって♪」
舌を出し、ちょっと可愛い子ぶってほっぺにキスしてみた。
「……もう//しょうがないなぁー。」
プンプンしながら歩いてく君だけど、紅い頬を見たらついつい笑ってしまう。
あぁ愛しい。
俺が傘をわざと持ってこなくなってからもう随分経つ。
言い訳を考える事すらもうしない。
君の赤い傘に入るのが、俺の唯一の楽しみだから。
「もっとこっちおいでよ。濡れちゃうよ?」
なんて甘い声で囁く。
「…拓斗っ!近いから…。」
伏せるまつ毛。
紅くなるほっぺ。
「はいはいっ、ごめんねー。」
「……」
篠原 彩との甘い時間。
もう2年の付き合いだけど、未だに照れてる君をいつまでもからかっていたくなる。
飽きることのない時間。
こんな甘い雰囲気に何もかも呑まれてた。
真実
笑顔
傘の内側
少しずつ崩れていったのは、俺の気のせいなんかじゃなかった。
ホントは何となく気が付いていたのかも知れない。
でも、雨が傘を叩く音に、いつも掻き消されていた。