男は口角を上げると、勢いよく向かってくる。
振り上げられた拳を避けて、腹を蹴り上げる。
「――痛っ……。」
男は腹を抑え、両膝をついた。
「だから舐めるなと言ったんだ。」
後ろでは白石がパチパチと手を叩く。
「奈美さん強ーい。」
バカにしたような声を上げる白石を振り返る。
「……誰のせいでこんなことになってると――」
「――あ」
白石が声をあげて私の後ろを指差した。
つられて後ろを向けば、鉄パイプを降り下ろしかけている先程の男。
――しまった、いつの間に。
避けられないと、ぎゅっと目を閉じた。
けれど、どんなに待っても痛みは襲ってこない。
「………?」
恐る恐る目を開けると、片手で鉄パイプを受け止める白石の背中。
「ダメだよ、女の子にそんなもの使っちゃ。」
低い声音。
白石は下ろしていた前髪を掻き上げる。
「――お前、白石 稔!!」
男は怒りを露に白石の名前を呼んだ。
「何の用かは知らないけど、相手ならしてやるよ。」
白石はニヤリと笑うと鉄パイプごと男の体を引き寄せ、拳を腹に入れる。
男はその衝撃に意識を失ったようで、床に倒れ込んだ。
「お前ら全員俺に用なんだろ?まとめて相手してやるから、掛かってこいよ。」
白石が周りの男達を挑発するように言う。
「さあ、誰からいく?」
白石が一歩一歩近付くと、男達は一斉に逃げ出した。


