一人納得したように白石は頷いた。
「?」
「だってそうしたら、また奈美さんと話せる理由になるし。」
「……は?」
「ううん。気にしないで。それより体調は?」
白石は私に近付き、手を伸ばしてくる。
「な、何だよ?」
「逃げないで。大人しく、そのまま。」
白石の目が真っ直ぐ向けられて、私は何故だか動けなかった。
白石の手は私の額に当てられる。
間近で見る白石の顔。
確かに……
整った顔立ちをしている。
容姿端麗……か。
男からも女からも憧れられる存在。
何となく分かる気がする。
「うん、だいぶ下がってるね。でもまだ熱あるみたいだから、早く帰って寝た方がいいよ。」
「……………」
「………奈美さん?」
「あ、ああ。」
「どうしたの?あ、もしかして僕に惚れちゃった?」
おどけて白石は言う。
私は鼻で笑った。
「私が?そんな事あるわけないだろ。」
「えー?分かんないと思うけど?」
「ないな。あり得ない。私は誰も好きにならないんだよ。」
「…………」
椅子に置いてあった自分の鞄を手にする。
「世話になったな。ハンカチは明日返す。じゃあな。」
私は足早に部屋を出て、帰路に着いた。


