額がひやっとした。
冷たい何かが当てられている。
何だこれ……タオル?
いや、ハンカチか。
「――――さん」
声がする。
「…………美…ん」
何だか、心地いい声だ。
「――奈美さん」
「あ………」
開けた視界に一番最初に映ったのは、白石の顔だった。
「う、うわっ」
私は勢いよく起き上がり後退する。
「そんなに逃げなくても……さすがに傷つくよ。」
「あ、悪い。思わず……って、ここどこだ?」
私は辺りを見回す。
「カラオケの一室。」
「カラオケ?何で私がお前とカラオケなんて来ているんだ?」
「奈美さんがいきなり倒れるからだよ。家分かんないし、近くに休めそうなとこって言ったらここぐらいだったから。」
「……わ、悪かった。迷惑かけたな。」
立ち上がった拍子に、床に何かが落ちる。
それはハンカチで、私は手に取った。
案の定それは濡れていて、さっきまで額に当てられていたのだと悟った。
「これ白石のだよな?」
白石はにこっと笑った。
「洗って返すよ。」
「え、別にいいんだけど…ああ、でもそうだね。そうしてもらおうかな。」


