私こと桜川琴美は、この春に高校二年生になる。私は自分の名字が大好きだった。もちろん、名前もだけど。大好きな桜という漢字が付いてるから。ちなみに琴美という名前は、お父さんがお琴の名手で、それにちなんで付けられ
たらしい。
こう見えて私は結構苦労してるんだ。昔、私が小さい頃、妹の智美が病気で死んだ。癌だった。その妹の形見の、ローズクォーツのペンダントを、毎日お守りのように肌身離さず持っていた。ずっとずっと、忘れないように。

私は学校へ着くと、下駄箱で慌てふためいて、下駄箱から見えないように隠れた。下駄箱に、蛍君がいたから。
――哀川蛍君、高校一年の時に、初めて見た時から、ずっと気になっている。そう、一目惚れってやつ。儚げで、少し暗い影を落としている、男の子。ラッキーなことに、二年でクラスが同じになったの。でも、私はその引っ込み思案な性格から、自分から話しかけるなんて、とてもとても……。自分の性分を悲しんだなぁ。