白いドアを開けると

ベッドの上に

窓の外をぼーっと眺めるそらがいた。

こっちに気付いたそらは

"遅いぞ"ってふざけて頬を膨らませたあと、

綺麗な笑顔で笑った。

泣きそうになった。

大好きだよ。

大好きだよ。

「………大好きだょ…」

気付けば声に出ていた。

「どうした、急に?」

困ったようにそらは笑った。

俯くあたしに

「………俺も………」
って小さく聴こえた。

見れば笑顔のそらが照れ臭そうにしていた。

「…こっち来いよ。」

「うん。」

ベッドの横まで行くと

そらはあたしを椅子に座らせて

それから

強く抱き締めてくれた。

病院独特の匂いから

一気にそらの匂いに変わった。

噎せる程吸い込んだ。

ああ。

あたしはこの人が好きだ。

何よりも好きだ。

目頭が熱くなった。

「…どうしたんだ?」

急にそらが聞いた。

「え?」

「さっき、泣きそうだったじゃん?」

…気付いてたんだ。

「何?また親と喧嘩した?」

「ううん。」

あたしは首をふる。

「じゃあ、どうした?」

…ここで言ったらどうなるの?

君からあたしの記憶が消えるかもしれません、って。

だからあたしは悲しいんです、って。

そしたら、

そしたら君はきっと

"はるを忘れるくらいなら俺、手術なんてしねぇよ"って言うから。

だからあたしは

「んっとねー、走ったら疲れすぎて涙でた・笑」


笑顔で君に嘘を吐くよ。