夢の欠片

「優奈ってやつはどういうやつなんだ? 何か特徴とかないのか?」


俺は走りながら陽菜にそう訊いた。それを知らなければがむしゃらに走ってもまるで意味がない。


「うーん、結構いなくなってから日にちが経ってるから、髪の長さとかはよく分からないけど、結構幼い顔立ちで、可愛い」


幼い、何かが引っかかる。


「そんなのいくらでもいるだろ! 他には!」


学も俺と同じで手がかりを掴もうとしているようだった。


「うーん……頭が良くて、運動神経も良くて、いじめられてたせいか人を慎重に見る癖があって、努力家で……」


「そんなこと言われても捜す情報にはならん。容姿を言ってくれないと。いや、待て……やっぱり何かが引っかかる」


俺は必死にそれが何か突き止めようとして、容姿だけでなく、何でもいいから情報をくれと要求した。


「咲森優奈、身長は小柄な方で……」


「咲森……あ!」


引っかかったものが身近すぎて自分でも拍子抜けした。


確かに咲森という苗字で、幼い顔立ちをしていて、家がないと言っていた。由梨、お前なのか。名前だけ偽って俺たちと一緒にいたのか。


「どうしたの?」


「母さんに連絡する!」


俺は素早く携帯を取り出し、スピーカーを耳に当てた。


プルルルルルルル


電話の呼び出し音が長く聞こえる。


プルルルルルルル


早く出てくれ、母さん!


「もしもし?」


出た!


「母さん! 由梨は?」


「え? なになに、どうしたの?」


「急用! 早く呼んで!」


「う、うん。ゆりー? いる?」


母さんは何度も由梨の名前を呼んだ。しかし、反応はないようだった。


「皆、一応、俺の家の周辺を捜してくれ。学、俺の家までの道案内を頼む」


「任せろ」


学たちが走っていって間も無く、母さんから由梨の靴がないことを知らされた。


それを聞いて、俺も学たちの後を追っていった。