夢の欠片

閉じ込められたいた時、私と陽菜は少し話をした。きっかけは陽菜が謝ってきたことだった。


「ごめんね……私さ、友達が欲しかったんだ。でも、こんな私が欲しがったらダメだよね……」


気持ちはよく分かった。私も同じ気持ちを何年も味わってきたから。


「実はね、私がここに転校してきた理由、いじめられてたからなんだ」


彼女になら何でも話せる。


「私ね、自慢じゃないんだけど、家には沢山のお金があって、何不自由ない生活してるの。服も鞄もペンも、何もかもが高価な物で、周りからすごく妬まれたんだ。私はね、別に欲しい物なんか無かった。ただ、一つだけ欲しかったのは友達だった。それはお金で買えなくて、妬まれているままじゃ、何も変わらなかった。だから質素な生活がしたかったんだ。だけど、その気持ちはお母さんに分かってもらえなくて、今のように転校を繰り返すようになったの。どこの学校でも同じように妬まれてて、疲れたんだよね、私」


陽菜は黙って聞いてくれていた。


「ずっとずっと、今も、私はいじめの運命から逃れられないんだって思ってる。今回のいじめのきっかけはお金に関することじゃなかったけど、これで良かったんだって思ってるよ。だってさ、もしかしたら初めての友達ができて、その人の支えになることができるかもしれないから」


最初は陽菜が遠い存在だと思ってた。多分、最初に私に見せた笑顔が本当の顔で、今の辛そうな顔は学校用の顔だ。いつでも笑顔でいてほしい。私がそのきっかけになれたら……


「友達になろう?」


私は陽菜に手を差し出した。彼女は一瞬目を見開き、私の手を一度見ると、あの時の顔で笑った。そして、私の手を握った。


「うん!」


それからはお互いに隠すことなんかなかった。辛かったこと、悲しかったこと、今までの自分の努力。全てを打ち明け、共感し合った。


不思議なことに、話をしているだけなのに、背中の重荷が取れたような気分になった。


自分の理解者ができるってことが、こんなにも気を軽くするなんて思ってもみなかった。


陽菜は私と違って、中二のクラス替えの時からいじめられていたようだった。きっかけは、頭にハエがとまったこと。臭くもないのに汚物扱いされて、相当酷い目に遭ったようだった。


「小学生の初期からいじめられてたなんて……辛すぎるじゃん」


「だいぶ慣れたから、そうでもないよ」


用務員さんが助け出してくれたのは、それから間も無くのことだ。