キーン コーン カーン コーン


昼休みを知らせるベルが鳴った。


弁当を食べる者、体育館へ遊びに行く者、読書をする者など、生徒達が様々な行動を始める中、羚弥は同じ学年で別のクラスの新聞部、尾形真理の手伝いをしていた。


「ねえ、羚弥君。いい記事になるようなこと思いつかない?」


「えー? んー……あ!」


羚弥の様子に敏感に反応し、真理は身を乗り出した。


「なになに? 何か思いついたの?」


「いやー、弁当アンケートってどうかなって思ってさ。皆が食べる主食とか、おかずとかをグラフで表したら面白そうだなって」


「なるほど! いいねー。さすが羚弥君だ!」


適当に言っただけなのになーと思いながら羚弥が他にもないかと考えていると、弁当を食べている学が文句を言ってきた。


「おいおい、羚弥。女子の手伝いをしてモテようとか考えなくていいからさ、一緒に弁当食おうぜ? しかも他のクラスのやつに手を出すなんて……」


「そんなこと考えてねえよ! お前と違って俺は変態じゃありませーん」


「あぁ!? 誰が変態だって?」


二人のいつもの言い争いが始まろうとしたのを見て、真理は間に入った。


「まあまあ二人とも! 羚弥君、いつも手伝ってくれてありがとね。じゃあね!」


「おう。こんなの朝飯前だぜ」


真理が教室を出ていってすぐに、再び学が羚弥にちょっかいをかけた。


「おいおい羚弥、今は昼飯時だ」


「えっ? お前朝飯前って意味知らねえの? 容易い御用だぜって意味なんだけど」


「知ってるわ! どんだけ俺はバカなんだよ!」


羚弥はやれやれとワザと両手を肩のあたりまで挙げた。


「ふっ、そういうことも考えずに適当に言うあたりがさすがだよな」


「くっ……」


いつものいじりトークが始まろうとした時、教室に山辺が入ってきた。それによって辺りが静まり、視線が教卓に集まった。


山辺は教卓の端に両手を乗せ、一度教室を見回してから話し始めた。


「おい、お前ら。朝言ってた黒いスーツを着た男たちの話だが、警察によると人を捜しているらしい。怪しい人じゃないから安心しろ」


「それだけを言うために来たのかよ……」


学が山辺に対して愚痴を洩らして呆れる一方、羚弥は男たちに対して更に疑念を抱いていた。


『ずいぶん大がかりな捜しもんじゃねえか……どんな人物を捜してるんだ?』


そんな羚弥とは違い、山辺の話は既にどうでもよくなっていた学が羚弥に話しかけた。


「羚弥もさっさと食おうぜ」


その声は聞こえていたが、もう少し考えていたいと思い、羚弥はあえて無視することにした。


『あのスーツの統一性、あの人数が謎だ。どうなってやがるんだ?』


「おーい、羚弥?」


『そんなに大事な人物なのか?』


「れーーやーー」


『いや、普通は大事でないやつなんかいないはずだけど、それにしても人数が多すぎる』


「羚弥!!」


学が本格的にうるさくなってきたので、羚弥は反応してあげることにした。


「おお!? 何だよ。急に大声出してさ。バカじゃないの?」


「俺は何回も呼んでたよ! 気づかないお前こそ周りが見えてないダサいやつだ!」


「声だけに頼るのが悪い」


「いやいやいや! 普通は声だけでも分かるから!」


再び言い争いが始まった。