突然現れた王子



ゆっくりドアを開けると、

壁にもたれるケイタがいた。


「ケイタ…着替え終わったよ?」

「ああっ、うん……」


少し気まずい空気が流れる。

お互い照れてしまって上手く話せない。


二人で部屋の中に入った。

どっちも口を開かない。


別に話さなくてもいいんだけれど、
この沈黙がすごく苦しい。


「あの、さ……」


その時、ケイタが口を開いた。


「さっき……別に見てねーから…」

「うん…」

「だから…そんな固まんなよ」

「ケイタじゃん、固まってるの」


あたしがそう言うと、ケイタは『あっ…』と言って口を押さえた。