突然現れた王子



光の言葉を、あたしは精一杯否定する。


「まっ、いいけどさ。ほらよ。ちゃんと返せよ?」

「分かってるよー。ありがと、光」

「おう」


あたしは光から借りた服の入った袋を抱えると、
部屋を出ようとした。


「あっ、そうだ」


ドアノブに手をかけたところで振り返る。


「しばらくうち来ないで?」

「……は?」


なるべくケイタのことがバレたくないあたしは、光に言った。

光は納得のいかない顔をしている。