突然現れた王子



「俺、一ヶ月前にな、事故に遭ったんだ」


ケイタは少しつらそうに話す。


「朝、学校に行く途中、赤信号で飛び出した小学生がいた。
向こうからは車が向かってきてた」


あたしはその時の光景を、頭の中で想像した。


そして恐ろしくなった。


「俺は自転車を投げ捨てて、その子を助けようとした。
でも、もう車は近くまで迫ってきてた」


苦しそうに歪んでいくケイタの顔。

あたしの顔も歪んでいく。