「…知らね。気付いたらここにいたもん」


気付いたらここにいたって…

ありえなくない?


「出てってよ。ここはあたしの部屋なんだから」


あたしは少しきつめに言った。

それでも男は立ち上がろうとしない。

そして口を開いた。


「俺も出て行きたいんだけどさ、なぜか出れないんだよ。
しかも家分かんねー」

「出れない?
意味分かんないんだけど。
しかも、家分かんないって…」


ポリポリと頭をかく男を、あたしは不審な目で見た。


部屋から出れない?

普通にドアノブ渡したらドア開くのに。

それに家が分からないって、もしかして…


「記憶喪失?」