突然現れた王子



「ありがとう」


あたしが呟くと、

ケイタはあたしを軽く、抱きしめた。


「ケイタ…?」


びっくりして呼びかけると、ケイタは言った。


「俺の方こそ、ありがとう。
笑ってくれて、楽しんでくれて。
アユの笑ってる顔見ると、俺も楽しい気分になった。
だからありがとう」


笑ってくれてありがとう。

楽しんでくれてありがとう。

そう言うケイタが、すごく愛おしく思えて。


こちらこそありがとう、なんて

キリのないありがとうを言い続けて。


幸せな時間だった。