突然現れた王子



「ケイタは、悪くないよっ。あたしが勝手に泣いただけだから…」

「でも、無理やり連れてったのは俺だし…
せっかくの誕生日なのに、泣かせてごめん」


そんな顔、しないでよ。

あたしはケイタに暗い顔してもらいたいわけじゃない。

謝ってほしいわけじゃないのに。


「ねぇケイタ…謝るなら笑ってよ。
あたしはケイタに笑ってほしい」


あたしがそう言うと、ケイタは一瞬驚いたあと、
優しく笑った。


その笑顔は、
あたしが今まで見た中で1番、

優しい笑顔だった気がする。