突然現れた王子



「ごめんな…まさか泣くとは思わなくて……
もう出よっか」


そう言ってケイタは、あたしの手を優しく引くと、

さっきのお化けに出口を聞いた。

丁寧に案内してくれたお化けに、お礼を言って、お化け屋敷を出た。


あたしはその間、ずっと泣いていて。

怖くて怖くて、涙なんて止まらなくて。


けれど、あたしを引いてくれるその優しい手に、
安心感さえ抱いていて。

一緒に入ったのがケイタで良かったって、

そう思った。


「大丈夫か?」


近くのベンチに腰掛けて、
あたしの頭をずっと撫でてくれたケイタ。