ウインクをしながら乙女のような声で言う母親に、

ケイタも呆れ気味だった。


「今日はご馳走ね!
ケイタくん、何がいい?」

「あっ……なんでもいい、です…」


少し戸惑いながらも答えるケイタ。

これから一緒に住むんだし、
そんな遠慮してたらやっていけないのに。


「何か好物とかないの?」


しつこく問いかける母親に対して、ケイタの顔からは表情が消えていく。


「特に……」


ボソッと呟くように言うケイタ。

諦めたのか、母親はちょっぴり笑って部屋を出ようとした。