突然現れた王子



緑の多い景色の中を走ってきた電車は、

また賑わう街中へと戻ってきた。


「次降りるから」


そう言ったケイタのあとをついて、電車を降りた。


あたしの住んでいる街とは、また雰囲気の違う、
なんだか賑やかな街。


「アユ、ほら」


そう言ってケイタは、自分の右手をあたしに差し出した。


「な、なに?」


意味が分からなくて、あたしはケイタの手をじっと見つめていた。


するとケイタは、あたしの左手を強引に引っ張ると、
自分の右手と繋ぎ合わせた。


「はぐれると危ないから」