そんなあたしと母親のやり取りを、
ケイタは何も言わずに眺めていた。


あんたのことなんだから、一言ぐらい言ってほしい。


「……あ」


ドアを閉めようとした手を止めて、
母親は再び振り返った。


「そういえば名前聞いてなかったわね。何て名前?」


ケイタに微笑みながら母親は聞いた。

ケイタは一瞬あたしを見たあと、ぎこちなく口を開いた。


「あっ……ケイタ…です」

「ケイタくんね。あたしは陽子。
陽ちゃんって呼んでね」

「はぁ………」