病院に着くと、真っ先に沙耶姉チャンの所に向かった。
渚お姉チャンが言ったように命に別状はなく、胸をホッと撫で下ろした。

それでも、頭を包帯で何周も巻かれた、姉の見慣れない姿に 、涙が出た。
渚お姉チャンは、やっぱりこんな時には頼りになる存在で、心の内はわからずとも、しっかりと平静を保ち、私を宥めてくれた。


それから、沙耶姉チャンに本でも買ってきてあげよう、と渚お姉チャンがおもむろに切り出し、ポツポツと小雨が降りだす外に出た。

少し歩くと、何故か公園のベンチに座ろうと言う渚お姉チャンに対し言われるがままに腰を掛けた。
そこで、沙耶姉チャンが、もしかしたら記憶喪失かもしれないという事を耳にする。
そんな訳ない、とは思うも渚お姉チャンには何か裏付けるものがあるみたいで、私は只々、頭の働かない脳で聞く事しかできなかった。

この夜はさらに長かった。

突然、渚お姉チャンの携帯が公園中に鳴り響いたかと思うと、何かを誰かと話した直後、強くなってきた雨に打たれながら、闇雲に歩き出した。

何とか呼び止め話を聞くと、恋人である翔サンまでもが事故を起こした、という信じがたい事実を知った。渚お姉チャンも、さすがに堪えきれなくなり、二人で病院のロビーで泣きじゃくった。


後に…
この夜は狂気に満ちていた、と誰もが口を揃えた。

そう…
この夜は、これで終わりではなかった…

※注※
このページの表現は、凄く曖昧で淡々と描かれていますが、8月16日につきましては、作者の処女作で対となる物語の
『月華〜月ニ咲ク華〜』にて、公開する予定です。