「お冷やおつぎ致しますか?」 「お願いします……あれ? さっきまで居なかったよね? かわいいね。 俺、田中礼於(たなかれお)って言うんだけど、君は何て名前?」 襟元より少し長くて、耳が隠れる黒い髪の男子が言った。 えっ? ナンパ? いきなり何だろう? こういう時ってどうしたらいいの? 「うわっ! 冷たっ!」 久しく罵声しか浴びて来なかった私は、手元が狂ってもう一方の男子に水を掛けてしまう。