「……もう終わるから、気にしないで行って?もしかして、この仕事が気になってここに寄ったの?」
「……それも、あるけど」
「染谷くん、本当に真面目だね!大丈夫、大丈夫!本当にもうメールで送っちゃうだけだから!」
ほらほら、と自分の画面に視線を向ける。
メール作成画面には、打ちかけの文章。
あと3分もあれば、本当に終わるし、帰れる。
「……ありがとね」
「え?いやいや、そっちこそ出張お疲れさま。私がもっとマシな速度で仕事が出来ればこんな時間までかからないんだけどねー。
……あ、そうだ。今日真理ちゃんと一緒に部署のみんなにチョコ買ったの。たぶんまだ余ってるから、染谷くんもよかったら持って帰って?」
好き、の気持ちが入ったチョコが渡せなくても、せめて。
せめて、バレンタインらしいことをしたくて。
後輩の真理ちゃんと一緒に部署のみんなに買った義理チョコを薦めた。
……こんなの、むなしいだけなのに。
本当に好きな人に義理チョコなんて。
どうして私は、こんなに意気地がないんだろう。
そう思いながらも、精一杯笑顔を作った。
心を締め付けるのは、昨日の私の浮かれ気分。
……もしかしたら、なんて考えていた、甘い自分。
「……コーヒー、ありがとう。おかげでだいぶ温まったよ。
……だから、手、離して」


