雨と電車とチョコレート


「そ、そういえば、外せない用事って、今日?こんなところにいて大丈夫なの?」

「ん?……あー、そうだな」


……こんな日に。

バレンタインの夜に。

外せない用事、なんて。



「……チョコでももらいに行くの?」


勇気を振り絞ってきくと、彼は曖昧に笑った。


……あーあ。

私やっぱり、伝えない方がいい、んだね……。


自分で話をふっておいて、勝手にへこんでる。


気持ちを伝えるだけ、なんて私にはできないから。


……染谷くんがもしも同僚じゃなかったら、気にせずに言えたかもしれないけど。


「じゃあ早く行った方がいいんじゃないの?」

「んー。そうだな。……てかさ、胡桃さんが今やってるの、俺がやるはずだった仕事だよね?」

「え!?……や、あの、これは」


急ぎの書類だからって回されたけど、染谷くんみたいには要領のよくない私は、こんな時間までかかってようやく終わりが見えてきたのだ。


あとはメールで総務に提出して、来週の朝一で処理してもらえば大丈夫なはず。