4階の音楽室から、職員室のある2階まで静香と一緒に下りて、そのまま1階におりる静香から音楽室の鍵を受け取った。



「ありがとね。お願い」


「うん。じゃあねー」


「ん。また明日」



にこりと笑って、静香は、たたっ、と階段を下りていった。



紺色の指定コートからのぞくスカートが、ひらりと揺れる。



私はなんとなく静香の姿を見送って、職員室へ歩き出した。





「失礼します」


「お、今日は宮本か」


「先生」



職員室に入ったところで、コーヒーでも淹れに立ったのか、マグカップ片手にドアのところにいた顧問の早川先生に出くわして、私は持っていた鍵を渡した。



「おつかれさん。……で、俺にチョコはないのか?」