雨と電車とチョコレート


急いで来たのか、微かに息が上がっている。


いつも完璧にセットされているブラウンの髪が、乱れている。



……そんなに走ったの?



「あ、の……?」



私の手をつかんだまま何も言ってくれない彼に、私は漸く声を押し出すことが出来た。


私の声に、彼はハッとしたように手を離して、「すいません」とばつが悪そうに謝った。



「……もう、行っちゃったかと思って。そしたらいるから、驚いて、つい」




初めて聞く彼の声は、深くて、澄んでいた。



「あの、電車なら、行っちゃいましたけど……?」



彼の言葉の意味を量りかねてそう言うと、彼はカッと顔を赤くした。


白い頬が朱に染まる。


……私、何か照れさせちゃうようなこと言った?




いや、でもそれにしても。