鶺鴒の家族探し

「綺音か・・・良い名前だな。んじゃ、飯食いにいくか。今なら人もすくねぇし」

アルトが俺に手をさしのべてきた。

怖い。
嬉しい。

俺は手を取り立ち上がった。

「はぁ!?」

金髪の男が驚きの声をあげる。

布一枚。
薄汚れて刷りきれた。

体がさらされる。

布で大部分が見えないものの、
腕や脚。
至るところに。傷があった。

殴られたり、蹴られたりして出来た。
打撲痕。
魔法によって出来た。
火傷に切り傷。

「ぅあ・・・」

思わずしゃがんだ。
見られたくない。
知られたくない。と。

「大丈夫だ。嫌ならこれを着ろ」

アルトが上着を脱いで寄越した。
その上着を。温もりを。
身につけて。

少しだけ。
本当に少しだけ。
安心した。

不安だ。
それでも不安で。
怖い。

アルトのそばに寄り添って。
手を繋いでもらって。
周りを見ないように。
部屋を出た。

いろんな目にさらされて。
怖いけど。
泣きたいけれど。

歩いた。

体が震えて。
震えて。震えて。

アルトが手を強く握ってくれた。

震えが止まる。

アルトはこっちを見ないけれど。

嬉しくて。嬉しくて。
抱きついた。

「っ・・・」

息を飲んで俺を見る。
笑った。
どんな顔になってるか分からないけど。

このときから。おれは。
本当の俺に。戻れた。

のだと思う。