あたしはすぐに希壱の体を押した。



「な、なに?」

「んー?あ、まつげか」

「……へ?」



希壱はあたしの頬についていたまつげを取ってくれた。



なんだ、まつげ…。



「なんか期待した?」



希壱がニヤニヤしながらあたしをからかう。



「んなわけないでしょ。早く教室戻ろ」

「ごめんごめん」



ーあたしはこの時全く気付かなかったんだ。



ーもうすでに罠に引っかかっていたことを。