重信は、できることならこのお誘いを断りたかった。はっきり言って、身体中あちこち痛む上、これ以上どこか殴られでもすれば、どうなることか……。が、走って逃げ切れるだけの体力も無いだろう。
 ひどく気がすすまなかったが、ホテルで暴れて騒ぎになるよりはいくらかマシだと思うことにして、重い足取りでホテルの外へ出た。
 少し歩けば大阪城公園だ。ここは広い上に、夜は人通りも少ない。
 日中とは違って、しんと静まり返った公園の中程に差し掛かると、大寺は怒りを抑えながら重信を睨み見た。
「答えろ、萩本。お前がどうしてここにいる!?」
 もはや隠すことなどできる筈がなかった。隠したところで、まるで意味がないからだ。これだけ怒り狂っている大寺の様子からすると、既に重信がここにいる理由を知っているということに他ならない。
「アオイの付き添いで来たんです」
 かっとなった大寺は、物凄い勢いで重信に掴み掛った。
「このヤロー! 殺してやる!!」
 勢いで地面に倒れ込んだ重信に、大寺は馬乗りになって顔を何度も殴りつけた。
「ちょ、ちょちょちょっと! 連太! やりすぎだよ!」
「ウルセー!!!」
 流石に拙いと思って止めに入った小柴さえも、大寺は薙ぎ払った。
「って!」
 跳ね飛ばされた小柴だったが、すぐに大勢を立て直し、再び大寺の背中にしがみ付く。
「おいっ、龍介! ぼ^-っとしてんな! お前も止めろ!!」
 暴れたくる大寺を、ようやく二人がかりで抑え込み、小柴は叫んだ。
「萩本くん! 今のうちに逃げろ! このままじゃ君、連太に殺されるよ!!」