重信は、思い出すだけでも吐き気のする、昨晩の出来事を思い出していた。
 
 大阪観光の後、ホテルに戻った重信とアオイだったが、結局同室という状況に耐えられなくなった重信が、冷静さを失う前にと、ホテルのロビーで時間をやり過ごすことに決めたのだった。
 が、日中の疲れもあって、ロビーのソファーに腰かけたままうとうとし始めていた所に、あの悪魔のような事件が起こったのだ。

「おい、起きろ」
 低い声に起こされて、重信は眠い目をこすって瞼を開けた。
「萩本、なんでお前がここにいるのか説明しろ」
 鬼の形相になっている大寺と、このまずい状況をなんとか止めようとしている島田と小柴が目に飛び込んでくる。なぜこの最も会いたくない三人がここにいるのか、重信は全く理解できない。
「なんであんた達がここに……?」
 眠気も一気にどこかへ吹っ飛び、重信は咄嗟にそう訊ねた。
「連太も明日の大会に出るからだよ。俺と龍介はただの応援兼、観光だけど」
 小柴がちらりと大寺に視線をやりながらそう説明した。
「先にこっちが聞いてんだ! どうなんだ、萩本!」
 今にも重信に殴りかかりそうな大寺をなんとか抑え込み、
「まあまあ連太、落ち着いて。ここじゃ拙い。外出ようぜ」
 島田がホテルの祖を指差した。今のところ、まだホテルの従業員には気付かれていないらしい。