セク・コン~重信くんの片想い~

「よっしゃー! 次はでかい蟹だー!」
 こうして、次々とアオイは大阪の街にアオイファンを広めながら、かに道楽、食い倒れ、アメリカ村のミナミをはじめ、キタの街も大まかに制覇していったのだった。

 梅田で有名なラーメン店でしこたまラーメンを食した後、気付けばもう時計の針は十九時を回っていた。
「もうこんな時間かー」
 アオイはぐんと一つ大きな伸びをして、満足気に欠伸をもらした。
 あちこち身体の痛む重信にとって、今日一日は正直物凄くハードだったが、イブという特別な日を、こうしてアオイと共に過ごせたことに、心底感謝していた。何より、この一日で、普段見られないアオイの顔がいくつも見られたっことは、重信にとって何より嬉しいことだった。
 道路沿いのペットショップで仔犬にメロメロになっているアオイを見て、アオイが犬好きだということも分かったし、知らない土地で物怖じすることなく、人に声を掛けるアオイはやはり男らしく見えた。そのくせ女の子には無自覚に優しくて、持ち前の明るさと気さくさで、次々と皆を魅了していく。
(アオイはでかい……)
 重信は今日一日で、以前よりももっとアオイに対する想いが強くなっていることに気付いた。こうして、すぐ近くを歩くだけで、胸が苦しくなる程に……。