(やばいな、アオイに勘付かれないようにしないと)
 と心の中で考えながら、重信はこんなときだえは口下手と無口な自分に感謝するのだった。
少なくとも余計なことを口走って他人を心配させなくて済むという訳だ。

「……まあ、オレの気のせいならいいけどさ。何かあったらちゃんと言えよ? ハギはちょっと言葉が少なすぎっからな……」
 まだ短い付き合いとはいえ、流石はアオイ。重信の短所をよく理解している。
 そんなアオイに対して、重信はこれ以上ボロを出さないようにと、頷くだけで済ませ、コンベヤーの向こうから流れてくるアオイの愛車を指差した。
「おっ! 来た来た!」
 軽やかに愛車に駆け寄っていくアオイの小柄な後姿を目で追いながら、重信はふっと小さく笑った。
(アオイが元気なだそれでいい。よく考えりゃ、イブにアオイと二人旅なんて俺ってすごい幸せ者だし)
 今この瞬間が、重信にとってもの凄く貴重で特別な時間だった。

「ハギ。大会は明日だし、ホテルに荷物置いたらせっかくだし大阪観光行こうぜ!」
 アオイが愛車を転がしがなら重信に笑いかけた。
「おう」
 大寺たちのことはまだまだ解決できる兆しはないけれど、せめてイブとクリスマスの二日間だけは、気の重いことを忘れて楽しんでもいい気がした。

(って今、ホテルって言ったよな……??)