クリスマスイブ。世の中の恋人達が、待ちに待ったこの日がやって来た。
 街はライトアップされ、赤や青、金銀さまざまに飾りつけられ、光り輝いている。
 そんな中重信は……。

「うお~~~、見ろよハギ! 天下の台所、大阪だぞ!?」
 伊丹空港に到着し、アオイはいつも通りのテンションで大はしゃぎ。勿論、大切な愛車も荷物としてばっちりこの空港に飛んできている。
 荷物を受け取りに行く間も、重信はアオイの隣で至って物静かに過ごしていた。顔の腫れはまだひいてはいないものの、以前に比べるといくらか小ましになってきていた。
「おい、なんか今日いつもにも増してテンション低くねぇか?」
 アオイが首を傾げながら重信を横から見上げる。
「そうか?」
 実際のところは、ものっすごく嬉しくて楽しくて仕方の無い重信だったが、そのせっかくの喜びを全て打ち消してしまえる程の原因が、実は重信にはあったのだ。
 歩くだけでも、ましてや話すだけでも、この四日間の制裁によってできた傷が痛くてどうしようもなかった。実際、重信の身体のいたるところは痣だらけで、ひどい状態だった。入浴の際に鏡に映った自らの身体を見て、重信自身驚いた程だ。

「なー、お前なんかオレに隠してんじゃねぇ?」
 ベルトコンベヤーの前で、愛車が流れてくるのを待ちながら、アオイはそんなことを口にした。そんなアオイの鋭い質問に内心ビクつきながらも、
「いや」
と、重信は短くそう答える。