「お、お熱いことで……」
 自分で話題を振っておきながらも、アオイは苦笑いを浮かべて目を宙へと向けた。重信も、流石に二人のバカップルぶりを見せつけられると、目のやり場に困り、見ていないふりを決め込んできつねうどんをちびちびと食す振りを仕方なく続けていた。

「そう言えば、アオイちゃんはクリスマスどうするの?」 
 急に自分たちの世界から舞い戻ってきた美雪が、はたとアオイを見てそう訊ねた。途端、重信も、他人事では済ませなくなる。
「あ、オレ? オレはイブは大阪かな」
 耳を疑いたくなるアオイの言葉に、ぎょっとして重信はアオイを振り返った。
(だ、誰と、なんの為に?!)
 急に反応を示した重信に、アオイは不審そうな目を向ける。 
「なんだよ、ハギ」
「ーーーなんで大阪?」
 聞きたいことは山ほどあったが、これが重信の最大にして最低限の問い。
「二十五日はバイクトライアルの関西大会なんだよ。ほら、こないだの予選で残った各県の奴らが出る大会。ま、”世界の貧しい国の子どもたちに教育を”っつうクリスマスチャリティーイベントも兼ねてるらしいし、オレにとっちゃクリスマス会? みたいなもんかな」
 にかっと満面の笑みで答えたアオイに、重信はひとまずほっとする。
(なんだ、そうゆうことか)
 誰と一緒にイブを過ごす訳ではないと分かると、重信は黙ったまま椅子に座り直した。ひょっとすると、大阪に好きな人物やらと一緒に逃避行でもするのではないかと、変な想像までしかけるところだった。