重信の様子が明らかにおかしいこともあって、ここはなんとか話題を変えなければと考えた
アオイが、無理矢理別の話題を持ち出した。
「そ、そういやさ、早いもんでももう十二月なんだよな~」
 きょとんとした目で、恵太と美雪がアオイを見る。
 まさかあのアオイが、季節的なことを口にするとは思ってはいなかったらしい。それに、十二月に入ったのはなにも今日からという訳でもない。すでに、来週にはクリスマスを控えている時期だ。
「アオイちゃん、急にどうしたの?」
 美雪が目を丸くしてアオイの額に手を伸ばす。
「いや、熱なんかねぇよ! っつうか、人がせっかく明るい話題振ってやってんのに、お前らな!」
 美雪の手を振り払いながら、アオイはぐびぐびとグラスの中の水を飲み干した。
「ああ、なるほど!」
 ド天然男の恵太がぽんと手の平を打つのを見て、アオイは溜息をつく。
「来週クリスマスだろ? お前らどっか行くの?」
 そう言って、空になったグラスをテーブルに置き、恵太と美雪を見た。
 二人は、顔を見合わせる。

(ああ、もうそんな時期か)

 重信は、ぼんやりとそんなことを考えた。
「ん~、まあ」
 恵太が照れ臭そうにぽりぽりと鼻を掻いた。
「まだ美雪には言ってなかったんだけど、今年は調度イブが休日だから、二人でディズニーランドにでも行って、ツリーのライトアップでも見てこようかなって思ったり」
 恵太が全てを言い終わらないうちに、美雪は目をキラキラと輝かせた。
「えっ、恵ちゃん、それ本気!?」
 アオイと重信をほったらかしにして、二人は互いを見つめ合っている。テーブルの下ではしっかりと手まで握られている始末。まさにバカップルだ……。