「どうやって調べたんですか?」
 島田の笑い声にますます苛立ち、重信は強い口調でそう問いかけた。本当なら、こうした敬語さえ使いたくもない程だったが、ほんの少しだけ残された心のどこかの冷静さで、なんとか持ち堪えていると言える。
「お前と違って、俺ら人脈あんだよ。ま、そこんとこあんま気にすんな」
 個人情報もへったくれもない大寺の態度に、重信は強い嫌悪感を覚えた。

(なんだこの人……。だいたい、後輩一人を三人よって集ってこんな空き教室なんかに連れ込むなんて、普通あり得ないだろ)
 半強制的にこんな場所に連れてこられたことに対する不満もある一方、事細かに個人的な情報まで仕入れられていることに恐怖を感じずにもいられない重信だったが、相変わらず口下手で表現下手なため、特に強く抗議することはしない。表情の変化が微弱なこともあり、この三人からは特に怯える様子も全く見せず、単に不機嫌そうに睨んでいるようにしか見られていなかった訳だ。

「そんなことよりさ、何の秀でた特徴もない、平凡そのものの君がさ、この数カ月でアオイちんと急につるみ始めた。そこが問題なんよ」
 今まで大人しくガムを噛んでいた小柴が、とうとう口を開いた。
「ねえ、今まで友だちもほとんどいなかった上、彼女もできたことなかったくせに、なんでこうアオイちんにくっつく訳?」
全く、失礼な男だ。まるでオブラートに包んで物を言おうという気がさらさらない。重信は、そんな小柴の神経を思わず疑いたくなる。
「別に」
(っつうか、悪かったな、交友関係少なくて)
 本当は、思いっきり文句の一つでも言ってやりたい一心だったが、そこもまた口下手な重信。またもやぶっきら棒な一言が口をついて出てきてしまう。
「何それ。君、なんかムカつくよね」
 小柴がじっと目を細めながら重信を睨み、机からゆっくりと立ち上がろうとしている。
(それはこっちのセリフだろ……)