(だ、だがアオイ……、永遠子ちゃんの目が恐ろしいぞ……?)
 物凄い形相で重信を睨みつけてくる永遠子に、重信は気付かない振りを決め込むことにした。それが一番の回避方法だ。

「ま、ついでだし、オレん家で茶でも飲んでくか?」
 少し面倒臭そうにしながらも、頭をポリポリと掻きながら、アオイが願ってもない提案を出してきた。
(アオイの家で茶!?)
 天にも舞い上がりそうになる重信だったが、生憎表情の変化が微弱な為、ラッキーなことにアオイには何も勘付かれてはいない。
「えっ、いいの!? やったー!!」
 永遠子は望み通りになったことが相当嬉しかったのか、キャイキャイとはしゃぎ回る。

「因みに、永遠子は知ってるだろうけど、オレん家あれね」
 アオイが指差したのは、岡田さん宅から数十メートル程しか離れていない一戸建ての住宅だった。
(近っ)
「安心しろよ。今は兄ちゃんクラブ中だし、家ん中誰もいねぇから」
 あまりのご近所ぶりに、重信は思わず目を見張る。
 ”誰もいない”という言葉に、妙にドギマギしながら、重信はアオイ宅の門前に立っていた。さっきまでテンションの高かった永遠子まで、どういう訳か大人しい。
 ちらりと視線をやると、彼女の方も重信の様子を伺っていたようで、しっかりと目線がかち合う。
(う……)
 とても気まずい。どうやら彼女の不満は重信という存在が今こうしてここに共にあることにあるらしい。それは重信の方も同じだが……。