「うん、だからさ、久しぶりにアオイん家見てこうかな~なんて」
 えへへっと可愛らしく笑って見せる永遠子は、重信にとって腹立たしいことこの上ないが、彼女はやはり一枚上手なようだ。
「げっ、言っとくけど、家には入れねぇからな! 絶っ対!!」
 アオイがそうキッパリと永遠子に言い切る。
「それと、ハギも一緒だから」
 さらりと事も無げにアオイが言ったセリフに、永遠子の目が瞬間的に鋭く光ったのは、きっと気のせいではないだろう。

(お、悪寒が……)
 
 重信がぶるりと身震いする隣で、永遠子がそれに対して抗議する。
「なんでこの人も一緒なの? 岡田さんとは何の関係もないでしょ? それに、この人アオイの家とは反対方面だって前話してたじゃない」
 なるほど、永遠子の重信に対する対抗心は並のものではないらしい。
「それを言うなら永遠子もだろ? お前だって反対方面なのについて来んだから、別にいいじゃん?」
 アオイにそう言われてしまえば、それ以上言い返せなくなって、永遠子はそれ以来黙り込ん
だ。

(き、気まずい……)

 こうしてどういう訳か、重信はアオイと永遠子とともに、喫茶店の常連客の岡田さん宅を訪問することとなってしまったのだった。