「あれ、三年だよな?」
 珍しく重信からアオイに話題を振った。
 というのも、午前中アオイのクラスに当然のように現れた三人組が、やけに気になっていたからだ。
「ああ。三年の島田さんと大寺さんと小柴さん」
 スポーツバッグに机の中のノートや教科書を詰め込みながらアオイが答えた。
「ふうん……」
 なんせ口下手な重信。本当はあれこれとアオイに問いただしたい気持ちでいっぱいだったが、出てきた言葉はこの三文字。
「なんだよ。なんか聞きたいことあるんじゃねぇの?」
 アオイが手を止めて重信に視線をやる。
「……いや、どういう関係かなって」
 重信からすれば、十分すぎる質問だった。

「まあ、あの人らは兄ちゃんの知り合いっつうかなんつうか。本来、オレとは直接関係ねぇ人たちだよ。敢えて言うなら、大寺さんは兄ちゃんの幼馴染み? ってやつだけど」
 再び作業に手を戻し、アオイは落ち着いた口調でそう説明した。
 まだ何か知りたそうな空気を醸し出している重信に、アオイはもう少し説明を付け足した。
「あの三人はさ、同じミズキスポーツに所属している人たちなんだ。っつっても、三人ともバイクトライアル専門じゃなくて、スケボーの方なんだけど」
 荷物をバッグに詰め終わって、アオイはバッグの紐を肩に引っ掛ける。
「でも、大寺さんは高校入ってから、兄ちゃんの影響でバイクの方に移ってきたんだよね。だから、実質、大寺さんは同じクラブチーム所属っつうことになるかな」
 バッグを斜め掛けにして、アオイは教室を後にした。勿論、重信もその後をしっかりとついていく。