アオイが、
「悪い、お前らちょっと向こう行ってて」
と伝えると、恵太と美雪は心配そうな目をしつつも、窓際に寄って少しアオイから離れた。
(ああ、この前恵太たちが言ってた、いつもなら絶対一緒にいないような人たちってこの人たちのことか……)
と思いながら、重信はアオイの隣にぴったりと張り付いたまま離れようとはしない。
「おい、ハギ。向こう行ってろって」
「いやだ」
信じられないものでも見るかのように、アオイが重信を見やった。一方の重信は、ぶすっとした表情をして、てこでもそこを動かない気だ。
 そんな重信を見て、アオイが呆れたように溜息をつくのが分かった。

「---なに、そこの大型犬」
 島田がアオイの隣にさも当然かのように立っている重信に、いち早く気が付いた。
「まるで番犬じゃん?」
 小柴がぷぷっと吹き出した。重信は黙りこくったまま、三人の先輩たちを静かに見下ろして
いる。
「ってかさ、君でかいね。何センチあんの?」
 小柴は重信の前に立って、自分と勝手に背比べを始める。

「百八十五」
 ぼそっと低い声で答える重信。
「っつうか、超無愛想」
 小柴が全く反応を示さない重信の態度に目を瞬かせる。三人の中で、この男が一番お喋りなようだ。
「峻、黙ってろ。アオイ、こいつだろ? 最近一緒につるんでる奴って」
 大寺が、重信を顎でしゃくる。
「ほっとけ。オレのダチだよ」
 アオイは、今にも椅子から立ち上がりそうな雰囲気で面倒臭そうにそう返した。
「ああ! この子が圭司(けいし)の言ってた二年じゃん?」
 小柴が、思い出したように手を叩く。
「ふうん。見つけたら絞めとけって言われてんだよね」
 島田がパキパキと指の関節を鳴らしてみせる。