「まあ、いいか」
 アオイが、諦めたように肩を竦め、重信から差し出された牛乳をちうちうと吸った。何が原因かさっぱり分からないが、昨日のオムライスの一件以来、重信の中で何かが吹っ切れたのはアオイも気付いていた。
 またそれと同時に、アオイは昨日GIDのことについて重信に打ち明けていた。そのことを知った上でこうして懐いてきてくれる重信に、内心ほっとしていた。これで、重信はアオイのコンプレックスを理解してくれる数少ない人物となった訳だ。
……が、再び訪れた平穏は、そう長くは続かなかった。

「アッオイち~~~ん」
 教室の入り口から耳慣れない声がし、クラスメート達は一斉にそちらを勢いよく振り返った。
 入り口から連れだってぞろぞろと入ってきた三人組。この者たちは、この学校の一、二年生なら大抵がびびってしまうだろう少々派手目な三年だ。
 髪を金に近い色に染めた男は、島田 龍介(しまだ りゅうすけ)。洒落た鼻ピアスとトレッドヘアの男は大寺 連太(おおじ れんた)。黒髪に赤いメッシュを入れた男は、小柴 峻(こしば しゅん)。この学校でこの三人の名を知らぬ者はおそらくいないだろう。
 そんな三人が、教室に入ってきた途端、他の生徒は余所余所しくさっさと教室を出て行ってしまう。残った者も、視線を逸らすのが重信にも感じとれた。

(なんで三年のこの人たちがアオイのクラスに?)
 さも当たり前かのように、つかつかと三人は一直線にアオイの方目がけて向かってくる。
 アオイは、というと、ひどく面倒くさそうな顔をして三人を見向きもしない。
「また来た、大寺さんたち……」
 美雪が気まずそうにぼそっと呟いたのを、重信は聞き逃さなかった。
「またって、前にも来てたのか?」
 恵太が頷く。
「ハギがアオイから離れてる間、ほぼ毎日だよ。しょっちゅうここに来て、アオイに絡んでる