けど、実際口に出して打ち明けたのは、ハギが初めてなんだぜ?」
 真剣な顔つきだった。言葉の意味は分からないが、今話してくれていることがとても大切でどれだけ重要なことなのかは重信にも分かった。
「話すか話さないかで悩んだ時期もあったけど、ハギはダチだから。やっぱオレ自身のことをちゃんと話しておきたくて」
 試合直前と同じ真剣な目で、アオイは重信をじっと見据えた。迷いのない目。

「アオイはアオイだ」
 気付いたときには、重信はそう口にしていた。
 しばらく目を丸くしていたアオイだったが、すぐに満面の笑みに変わった。
「サンキュな、ハギ」
 自分のことを隠さず話せるアオイは尊敬に値する人物だと、重信は思った。対して重信はというと、未だ自分が”ゲイ”だということを、アオイに話す勇気を見いだせていないのだから……。
 重信にはアオイの全てがどうやったって、ものすごく男前に見えた。アオイ中には確かに誰よりも強い男らしさがある。

(そうだ。俺はなんで今までこんなことで悩んでたんだ。アオイが女だろうが男だろうが関係ない、アオイはアオイだ)
 重信は笑った。
 ここ何日かぶりの最高の笑顔で。