「何が半端って?」
 突如頭上から降ってきた声に、重信は勢いよく顔を上げた。
 重信を見下ろすように、恵太が肘をついてこちらを見つめていた。

「恵太!? 先帰ったんじゃなかったのか?」
 両手を後ろに回しながら、恵太は笑った。
「美雪とアオイには、今日居残りあるからって言って、先帰ってもらった」
 重信はそう言った恵太の顔をまじまじと見た。
「なんでここって分かった?」
ふふんと鼻で笑うと、恵太は重信の頭をグーで小突いた。
「ハギと何年の付き合いだと思ってんだよ? ハギの考えること位、分かるよ」

 その言葉を聞いて、しばらく黙り込んだ後、重信は、
「あ゙ーーー……」
と、また妙な呻き声を出してテーブルに突っ伏した。

「俺さ、ハギに謝らなきゃ」
 急に声を落とし、恵太が言った。
「……なんで恵太が謝る?」
 額をテーブルにくっつけたまま、重信は訊ねた。
「ごめん。ハギの様子おかしくなったのって、俺が余計なこと言っちゃったからだろ? マジごめんな」
 重信はこの時初めて気付いた。自分のあからさまな行動が、どれだけ恵太に心配をかける原因になっていたかを。
「違う。そういう訳じゃ……」
 重信がそう言いかけると、
「どう考えてもそうだろ!? 俺が変なこと言ってから、ハギ熱出すし、アオイのこと避け出
すし……」
 辛そうな表情を浮かべる。