「……だから、アオイは女なんだ。男が付き合ってもない女子とつるむとか普通あり得ないだろ!?」
 自分に突っ込みつつ、やはりアオイに対する気持ちというものがなかなか整理しきれない自分に苛立ちすら感じる。
 そんな不安定な気持ちのまま、それでも重信はスマホの受信メールから返信画面に切り替えた。
「何やってんだよ、俺……」
 ゆっくりとメールを打ち込みながら、大きな溜息をつく。

 ”恵太に聞いて”

 明らかによそよそしい、冷たい内容だと分かりつつ、それでもどうしてもそれ以外の言葉が浮かんでこなかった。
 アオイが女だと分かった以上、必要以上の接触は避けるべきだと、重信はそう考えたのだ。女子がなんでもない男子と四六時中行動を共にすることは、通常あり得ないこと。だからこそ、美雪と恵太も重信とアオイが付き合っていると誤解してしまった訳だ。勿論美雪と恵太だけではない。きっと、周囲の者の多くは、アオイと重信の関係を誤解しているに違いない。
 現に、アオイ兄が重信に対して怒りを露にしてきたのも事実だ。
(アオイには、別に好きな人もいるんだ)
 既に、重信がアオイの恋路の邪魔をしていることだって、大いに考えられる男が一人の女子とずっと一緒に行動を共にできるときはただ一つ。二人が付き合っているときのみだ。例えば、美雪と恵太のように……。

「決めた。俺はアオイから離れる」

 ベッドからむくりと起き上がった重信は、ボサボサになった髪のまま、一人決意表明するのだった。