「萩本君。自分に正直になった方がいいと思うよ?」
 なんて、とうとう美雪まで恵太に助け舟を出し始めた。美雪は美雪で、ハッキリしない重信に、だんだん苛立ってきたらしい。
っとまあ、彼女の場合はどちらかというと、腐女子的な妄想ネタ欲しさが大きいのだろうが。
「ああ!! もう分かった!!」
 頭をぐしゃぐしゃと掻き乱し、重信はやっと腹を括った。
(もう、俺がゲイって分かって、どん引きしたって知らないからな!!)
 もう完全に開き直っていた。今まで懸命に隠してきたことが、もうどうでもよく思える程に。

「アオイが好きだよ。それがどうした! 好きで悪いか!」

 そう暴露した重信を、恵太と美雪は黙ったままじっと見つめている。
「な、なんだよ」
 バツが悪くなって、重信は足元に視線を落とした。
「やっぱりなー!! そうだと思ってたんだよ、俺たち。ハギ、アオイの忠犬みたいにどこでもついて回ってるし、アオイにはやたらに甘いしさー」
 恵太と美雪は満面の笑みで、うんうんと互いに顔を見合わせて頷き合っている。

「そ、そうか……?」
「そうだよ。アオイの方もすっかりハギに懐いてるし、いいコンビっていうか、ペアっていうか」
 恵太は嬉しそうに話す。
(な、なんでこいつこんな落ち着いてられるんだ……? 俺は今、アオイが好きって暴露したんだぞ? 俺は”ゲイ”だって断言したも同じなんだぞ!?)
 美雪の方も、そんなことは特に気にした様子もなく、にこにこと笑いながら恵太と肩を叩き合っている。
「っとにハギは水くさいんだから。俺たち親友だろ? もっと早く相談してくれりゃ、色々サポートなんかもできたのに」

「そんなこと、簡単に言える訳ないだろ?」
 重信にとって、”ゲイ”だと他人に知られることに、強い抵抗があったから、恵太が言うようにそう簡単な話ではない。ましてや、少し前までは恵太のことが好きだったなんて、口が裂けたって言えやしない。

「ハギは基本、なんでも内に溜めすぎなんだよ。もっと他人を頼ってもいいと俺は思うぞ?」
 恵太がほんの少し淋しそうな表情なのは、きっと気のせいではないだろう。そして、きっと、口下手な重信を心配してくれていた。
「悪い……。どうも話すのが苦手で」
 昔からそうだった。口下手で口数が少ないせいで、他人から誤解されることも度々経験してきた。そんな中で、重信に嫌気を差すことなく、ずっと一緒にい続けてくれたのが、誰でもない井本 恵太この男だ。
「分かってる。けど、俺はそのおかげで、ハギが口に出さなくても、何考えてんのか予測つけんのが上手くなった。俺はハギが思ってるより、ずっと頼りになる男だと思ってるけど?」
 真剣な顔つきの恵太に、重信は驚き、言葉を失った。