高得点をキープし、アオイは満面の笑みでゴールを切った。
「やったな!」
 兄の圭司がアオイの肩をぽんと叩いた。
「ありがと」
 この日圭司の出番は午後ということもあり、午前中はアオイの応援をついていてくれたのだ。
「そういや、さっき連太も競技終わってたぜ」
 圭司は向こうのセクションを指差す。
「大寺さんも? どうだった?」
「あー、ありゃ多分無理だな」
 大寺はミスが多かった為、次の大会の出場権を得ることは難しいようだ。
「そっか。でも、始めたの高校入ってからだもんな。この短期間でここまで登ってくるなんて、十分すげぇよ」
 アオイはヘルメットを外し、圭司に言った。
 
 アオイの目標は常にこの目の前にいる兄、圭司だった。物心ついたとき、既に圭司はバイクトライアルに熱中していた。そんな兄に憧れて、アオイもバイクトライアルの世界に踏み込んだ。
 そして、アオイが自転車というものに没頭するのは時間の問題たった。自らのからの一部のように愛車を操り、思うように走らせる。自転車というものは、アオイにとってもう一つの足のようなものだった。
 毎日、日が暮れるまで練習して、難しい技にも取り組んだ。自信とともに、アオイのテクニックもぐんぐん上達していった。けれど、兄である圭司は、いつもその二歩先にいるのだ。