島田と小柴は、大寺に服従そているだけなのかもしれないが、大寺の行動にはどうも納得いかない部分が多い。アオイの兄、圭司という人物から例えアオイの周りを見張るよう頼まれていたとしても、重信を殺そうとまでする程の怒りに飲まれるには、あまりに不自然だ。

 重信は、スマホと財布を上着のポケットに差し込み、漫画喫茶店を後にした。
 アオイには直接会えないが、どうしてもアオイの出番までには会場に駆けつけたかったのだ。
 コンビニで顔の腫れ隠す為のマスクを購入し、上着のフードを深く頭に被ることで、これで遠目にはわからない筈だ、と考えて。

 
 重信は、なる丈アオイには近付かないようにして、会場の隅の方で様子を見ていた。当のアオイは、何度もスマホを気にして、キョロキョロと辺りを見回している。きっと重信を探しているに違いなかった。
 けれど、別のセクションに大寺達がいるのを見つけていたこともあり、会場を無闇に彷徨くのは危険極まりないことだったので、重信はアオイを安心させる為にメールだけを密かに送信した。

”もうすぐ出番だな。会場の端っこから見てる”

 すぐさまメールを見たのか、アオイは会場の隅に目をやった。人が多いこともあるし、少し距離があることもあったが、アオイは確かに重信の姿を目で確認した。