いつの間にか眠ってしまったのか。
時刻は4時過ぎを指していた。
そしてあくびをしながら、
ゼリーを食べて、お弁当を作る。
制服に袖を通す。
鞄を持って、玄関を開ける...
その時に
「いってらっしゃい」
という声が聞こえた気がした。
疲れてるんだ。幻聴だ。
そう言って、そう言い聞かせて
静かに家を出た。
そして電車に乗り、
駅に降り立ち、
改札を抜け、
駅を出ようとする。
そこまではいつも通りだった。
でも今日は駅出口の柱に
芦山心が寄りかかって
こっちを真っ直ぐ見つめていた。
「オハヨ」
「...おはようございます...」
なんで。
なんでこの人にはワタシが見えるの?
ワタシを認識してるの?
「なんでアナタにはワタシが見えるの?」
芦山心は頬を人差し指で掻いて、
どうしたらいいのか考えているような顔をした。
「俺にはさ、いや、俺だけじゃなくて、皆に藤原さんは見えてるよ」
...フジワラサン?
「ずっと、見えてたよ。藤原明さん」
フジワラアキラ...
そう、藤原明がワタシの名前
いつから?
ワタシがワタシの名前を忘れたのは。
男みたいな名前で大嫌いだった。
だから、あまり人前で名乗らなかった。
そうだ、
そうだよ。
ワタシなんだ。
無色透明にしてたのは。
皆、認識してくれてた。
それを無下にしてたのは
ワタシだったんだ。
そう、自分に期待なんてしなくなって、
それは周りもだと思い込んでいた。
消されたと思い込んでいた。
じぶんで消したのに。
ファミレスのお金は母が用意してくれてた。
「無理はしないでね」と言った。
あの対策ノートは兄がくれた。
シュシュは妹がくれた。
2人とも
「勉強頑張れ」
と言ってくれたのに。
ワタシはそんなことも忘れていた。
透明な殻に閉じ籠って
自分も透明になったと信じこんでいた。
1度も気が付かなかった。
でも、芦山心は一瞬で気づかせてくれた。
涙か自然と溢れてしまった。
「え...?何?なんか気に障った?」
あたふたした芦山心に
ワタシはつい泣きながら笑ってしまった。
その笑顔に芦山心は小声で
「その顔...反則だろ」
と言っていることに気がつきはしなかったけど。
無色透明...
物体に色が全くなく
透明な様。
でも、ワタシには色がある。
気付いてくれるダレカがいる。
ワタシは、
誰かに認められている。
いつか、こんな自分も好きになりたいと想う。
無色透明end...

