別に万人の目を奪うような、華やかな大輪の花だったわけじゃない 春の河原に行けばいつでもお目にかかれるような、ささやかな野の花 雨に打たれる、名もない可憐な花 花は電信柱の影に隠れるようにして、俺の家の二階辺りを見上げているようだった 通りすぎようとして… 足を止める 「ん。」 俺は花に傘を差し出した