薬を投与し始めてから1週間がたった。
この薬は癌を小さくするための薬らしい。
上手くいけば、小さくなった癌を手術で取り除くことができる。
と美緒には伝えてあるが、その小さくなった癌を手術で取り除くことができる確立は美緒の場合ハッキリ言って0%だという。
過去に成功例がない訳ではない。
ただし美緒の癌はかなり進行しているということ、特殊な癌だということ、全身に転移しつつあること。
これらが重なって、長くて1年、短くて明日。ということらしい。
現実はどこまでも残酷だ。
「気持ち悪い…」
美緒の背中をさすりながら、バケツを差し出す。
俺は仕事終わりに美緒のところへきていた。
職場と病院が近かったので、休憩中に少しだけ顔を出すこともできた。
とにかく支えになりたかった。
「ごめんね、嫌になったら来なくていいからね、本当にごめんね。」
美緒は吐くといつもそう言っていた。
「絶対に嫌になんてならないよ。謝らなくていいから、もっと頼ってほしい。」
「ごめんね…」
5日間の投与が終わったあと、様子見で2.3日経って異常がなければ退院できるらしい。
治療のための入院なので、月に2回、1回1週間の入院がめどらしい。
薬の量や回数はその時々に決めて行くので、一概に月2回とは言えないが、減らすこともしていくらしい。
"治療のため"とは言っているが、やっていることは延命処置だ。
美緒に少しでも長く生きてほしい。
そう願うのは当たり前のことだ。
まだ18歳の美緒に、もっといろんなことを知ってもらいたい。
俺もそう思っていた。
