あたしとしては確かに訊きたいことがいっぱいあるから、好都合だ。


でも、恵梨香さんとしては気まずいだろう。


たとえ事故とは言え、自分の持っている包丁で人を刺したのだ。


そのショックたるや、あたしが想像できない程のものだろう。


恵梨香さんのことも、考えてあげればいいのに。


俊哉もこういうところは、まだまだだなぁ。


「ま、とりあえずコーヒーでも淹れ」


「いい!!あたしが淹れるから、俊哉と恵梨香さんは座ってて!!」


「あ゛?なら美味しいの淹れろよ。あと甘いもの。」


「わかった。わかったから座ってて!!」


ここまであたしが焦るのには理由があった。


・・・俊哉は、料理が上手くない。


コーヒーを淹れることは、料理に入らないと思う人がいるだろう。


しかし、俊哉にとってはそれさえも料理なのだ。


前に淹れてもらったコーヒーの味は、忘れられない味だがしかし、説明の出来ない味であったことは確かだ。


それ以来、絶対に俊哉に料理はさせないと決めたのだ。


そしてコーヒーを三人分淹れ、クッキーとロールケーキを出すと、あたし達は話し始めた。


「和紗さん・・・ごめんなさい・・・。」